成年後見に関する雑記帳
成年後見と入院あれこれ
【目次】
1.病床の種類
2.一般病床
3.療養病床
4.精神病床
【凡例】医:医療法
精:精神保健福祉法
民:民法
【掲載】2017.02.01.
1.病床の種類
成年後見の仕事をしていると、利用者の入院に関わることがよくあります。
入院にもいろいろな種類があり、高齢者・障がい者それぞれに入院の制度があります。
医療法では、入院する病床として次の5種類が定められています(医§7②)。
1)療養病床
2)精神病床
3)感染症病床
4)結核病床
5)一般病床
ここでは、成年後見業務と関わりの深い「一般病床」「療養病床」「精神病床」についてみてみたいと思います。
2.一般病床
一般病床とは、他の4種類の病床に属さない病床のことです。通常、病気や怪我で入院する際には、まずこの一般病床でお世話になることが多いと思います。
後見業務に関連して一般病床の入院で注意したいのは、入院できる期間が短く、一定期間を経過すると病院から退院を促されることが多いことです。これは診療報酬制度で、一般病床では早期退院を促すルールが定められていることに起因します。まず、個々の患者の1日あたりの入院基本料は、入院期間が長くなるほど下がっていきます。また、入院患者の平均在院日数の基準も定められており、この基準を超えてしまうと入院基本料として低い点数の診療報酬となってしまいます。さらに、180日を超える入院は保険外併用療養費となり、入院料の85%を保険で支給して、残り15%程度は患者負担とするルールもあります。これらの規定により、病院としては高い診療報酬を維持し続けるには患者を短期間で入れ替え続ける必要があるため、早期退院が促されることとなります。このルールの背景には、社会的入院を防ぐという政策的な意図もあります。
3.療養病床
療養病床とは、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床です。急性期の疾病がひと段落して、長期間お世話になる際に利用することとなります。療養型病床では、患者の1日あたりの入院基本料は入院期間が長くなっても変わりありません。
療養病床の入院には、医療保険が適用される入院のほかに、介護保険が適用される入院もあります。前者を医療療養型病床、後者を介護療養型病床といいます。
医療療養型病床は、慢性期の状態にあって入院医療を必要とする患者に対する制度とされています。これに対して介護療養型病床は、要介護認定された患者に対するサービスで、必要に応じて医療も受けることができる制度と説明されます。ふたつの制度は適用となる保険は異なりますが、入院する患者側からみるとそれほど違いを感じることはありません。
4.精神病床
精神病床は、精神疾患を有する者を入院させるための病床です。
成年後見業務では、精神障がい者の入院にも関与します。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)で定められている精神科の入院形態には、代表的なものとして以下の3つがあります。
1)任意入院
2)措置入院
3)医療保護入院
任意入院は、患者本人の意思で入院するものです(精§20)。
措置入院は、入院させなければ自傷他害のおそれがある場合に、 都道府県知事または政令指定都市市長の権限と責任において、患者本人の意思に関わらず強制的に入院させるものです(精§29)。
医療保護入院は、精神保険医の診察の結果入院させる必要がある場合に、患者本人の同意を得られずとも、家族等の同意を得ることにより入院させる制度です(精§33)。現場では患者本人が入院に同意しない場合、措置入院には消極的で、専ら医療保護入院が多用されています。
後見人と保佐人は上記の「家族等」に含まれており、医療保護入院に同意する権限が付与されています。成年後見人にこの同意権があることについては、成年後見人に居所指定権が認められていないことと矛盾するのではないかという問題点が指摘されています(民§821,857,858)。